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5 仕方がないから、先へと進む。オシンコシンの滝を過ぎると、ウトロはもうすぐである。 ウトロといえば、大観光地ではあるが、実は以前泊まったホテルでは、冬場だったということもあるが、良い思い出しかないのである。今回は夏の観光時期ではあるが、どうなるか。 今回泊まったホテルもまた、1階のフロアが相当広く、修学旅行用のホテルのようにも思える。部屋は和室であるが、思ったよりは広い。 ただ、前に来たときもそうであったが、ウトロの大ホテル街はウトロ港から結構遠い、というより、高低差が大きいのである。単に距離があるだけなら歩いて行こうか、とも思うのだが、案の定、 「絶対車!この高低差を帰りに登れるかい!」 と妻に言われてしまった。 ところが、このウトロ港の欠点は、無料駐車場がないことである。どこへ行っても有料駐車場のオンパレード! やむなく、有料駐車場へ車を止めて、これまた中途半端に時間が余ったので、そのへんをぶらぶらとして、観光船の時間まであと20分くらいかな?と思って桟橋を見たら、 げげっ!長蛇の列? なんじゃ、こりゃ?と思うほどの人の列である。しまった。これなら、中途半端にぶらぶらなぞせずに、はじめから正直に並んでいるべきだった。 が、私には強い味方があったのだ。前述のS君から「人の列は、進行方向右側の甲板に集中するので、最初から階段下の進行方向右側座席を狙うべし。」という情報を得ていたのであった。進行方向右側というのは、もちろん、往路は右側に知床半島が見えるためである。 が、結果は・・・確かに、進行方向右側の甲板に人が流れていくのを見た。が、次の列が階段下の進行方向右側座席へと向かってしまい、結局我々は階段下の進行方向左側座席しか座れなかった。 まあ、その代わり、帰りは特等席になるわい! と言い聞かせて、出航する。ちなみに、妻子はとっとと、比較的観光客の少ない甲板後部から景色を眺めていた。私もそこからDVCを回し続けていたが、やっぱり帰りの特等席を手放したくはないし、かといって荷物も少々心配である。そこで、たまに座席に戻って荷物の確認をしたりもしたが、幸い、悪意のある観光客はいなかったようだ。 この知床半島を見ていると、確かに半島全てが山脈ではあるのだが、良く見ると、北海道の端の特徴である「ベニヤ板を乗せたような・・・」という地形を踏襲しているのである。 たとえば、今まで知床五湖の位置なぞ考えたこともなかったのだが、よく見ると、そのベニヤ板(といってもかなり隆起しているが、)の上にのっかっているようなところにあるのだ。そして、そのまま半島の中央部に知床連山がある、といった格好なのだ。 だから、知床岬を正面に見た航空写真の場合、海岸部で急激に盛り上がり、そこでしばらくなだらかな丘陵地帯があって、中央部で急な山脈になっているのである。なんだか戦艦大和を正面から見たようなイメージがあるのだ。 船は、ただ、だらだらと進んでいくだけなのだが、思ったよりも見ごたえはあった。知床連山には所々に雪が残っており、季節の感覚を狂わせる。ただ、ヒグマを見ることはなかったのが残念であった。あの知床五湖のどこかに少なくとも1頭は居るらしいのだが・・・ 船はカムイワッカの滝で引き返し、今度は我々の座っている側が特等席になる。 というところで、雨が降り始めた。本当に今回の北海道はこれで毎日雨に降られたことになる。 ウトロ港に着いたときには、傘が必要な状態だった。ちなみに、私は折りたたみ傘を2本持ってきており、妻子で1本、私が1本持って船を降りる。傘を持ってきていない人はかなり濡れたようだ。 「だから、車で来ていてよかったやんけ。」 と妻が得意満面で言う。 「はい、ありがとうございました。」 ともかく、我々は濡れることなくホテルに戻ったのであった。 今回の北海道では車中泊を除き、3泊したわけだが、1泊目がいわゆるユースホステル形式民宿、2泊目がビジネスホテル、そして最終日が観光ホテルになっている。 前述のとおり、前回の知床ウトロの宿は、宿が違うとはいえ格安でいいものを食べさせてくれたイメージがある。ただ、ここはやっぱり大観光地のホテルである。いったいどういう食事なのだろうか。 その前に風呂に入ってこようか。 まあ、それにしても広いホテルである。今の世界、こんな団体旅行ツアーなどないだろうから、まさに修学旅行宿なのだろうか。風呂に行くにも迷いそうだ。事実妻は完璧に迷ってしまって、フロントで場所を尋ねていた。 私はかずまると一緒に入ったのだが、かずまるは熱い湯が苦手である。したがって、このような温泉宿では案外長湯は出来ない。 このホテルには露天風呂があるので、かずまると外に出る。ここなら少しは湯もぬるいようだ。 かずまると並んで、湯に浸かっていると、ちょうど前方が網走方向のようだ。 そのあたりの空は真っ黒で、稲光が幾度となく地面をたたきつけるのが見える。幸い、ここからは距離があるので、雷鳴はない。 「あ、また落ちた!」 普段雷が苦手のかずまるも、距離が遠いということで、まだ余裕がある。 「こっちへ近づいて来たら、部屋に入ろうな。」 「うん。」 などという会話を交わしながら、北海道最後の夜が始まった。ちなみに、このとき知床を含む北見・網走地方には大雨洪水警報が発令されていた。 我々の行くところに警報発令あり! 我々の居ない愛媛県にも大雨洪水警報あり とまあ、開き直るしかないのだが、さあ、いよいよ問題の夕飯である。一応大広間での食事になるのだが、これまた結構広いうえに、食事場所があっちこっちにあって、迷ってしまった。 ところが、食事自身はすごかった。なんといっても「ちゃんちゃん焼」という鮭の切り身に野菜を絡ませて、味噌味にして鉄板で焼くという、豪快な料理に圧倒された。きりたっぷ里の寿司ももちろん美味だったのだが、あちらが「静」なら、こちらはまさに「動」であった。あとになってから、妻がしばらく「ちゃんちゃん焼」のことを口にしていたから、よっぽどだったのだろう。 腹いっぱい食べて、部屋に戻り、明日は時間に追われるだろうから、私は先に寝させてもらうことにしたが、妻子は夜中まで将棋をしていたらしい。 北海道最後の夜は、こうしてふけて行ったのであった。 |
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第5章 5日目 知床半島から根室中標津空港へ 1 北海道最終日が始まった。昨夜は我々の知らないところで結構雨が降ったらしい。が、今朝は天気が良い。雨も降りそうにない。 まったく・・・1日後ろへずれていれば、良かったのに・・・ とは思うが、そうしたら、豪雨運休の釧路〜根室間がどうなっていたか、見当もつかないので、それ以上は考えないことにする。 それにしても、最終日にして、よい天気である。我々は、一路知床五湖へと向かう。 途中の店で「熊よけの鈴」を買って(一体何に使うつもりだ?)、そこにある掲示板を見ると、 知床五湖、ヒグマ出没で一時閉鎖中! 店のおじさんが説明してくれた。 「今朝も、どうやら1頭、遊歩道にはいりこんでいるらしいのですよ。以前なら、空砲を1発鳴らせば逃げていったものですが、最近はなかなか逃げてくれなくて・・・」 「熊が慣れてしまったのですかねえ。」 いつの間にか、妻が来ていた。 「そうでしょうねぇ。ただ、世界遺産に指定されてから、熊を殺すことができなくなりまして、それもあるのかも知れませんね。知床五湖からカムイワッカまでの車の乗り入れが出来なくなったのも、その関係ですし。世界遺産も画一化過ぎて、良し悪しというところもありますね。」 と言われても、我々はただ「はぁ?」としか答えられない。 それにしても、天気が良くなったと思ったら、最後までこれかい?という気がしないでもなかった。 が、そこで、先ほどの私の「はぁ?」の次・・・「としか」・・・ ん?鹿? そうであった。せめて、エゾシカにでも会えたら・・・ヒグマには会いたくないが・・・ イプ様は快調に走る。このイプ様ともあと4時間ほどの付き合いである。 そうして、道が大きくカーブしているところで、 「いた!」 ちょうど、親子のようなエゾシカが、いわゆる獣道を向こうへと歩き去っていくところを見かけたのだ。しかも、反対側を見ると、 「こっちにも居た!」ひょっとして、先ほどの2頭とあわせて、親子だったのかもしれないが、こっちの鹿は悠然と草を食べている。 ちょっと、エゾシカをバックに記念撮影をして、再び知床五湖へ・・・ 最後の望みもかなわず、結局知床五湖には到着したが、今日も遊歩道は立入禁止になっている。 「オホーツクに○ゆのゲームのように、ここで殺人事件でもあったのかな?」 そんなバカな?と1人でぼけて、1人で突っ込んでどうする? 仕方がないので、展望台に行く。ここからならば一湖だけが見える。それだけを見て知床五湖に行った気分に浸るしかないが、まあ仕方あるまい。私が悪いわけではないから、諦めもつく。 逆の方向に目を向けると、結構オホーツク海が見える。ここからこのように見えるということは、昨日の船からもこの展望台が見えるということだ。ここへ来て、確かに知床五湖は、ベニヤ板の上にあるという実感が湧いてくる。 その知床五湖であるが、本当は単に「一湖」「二湖」「三湖」「四湖」「五湖」と呼ぶのが正しいらしい。ただ、それではあまりに味気ないということで、かつてここの管理事務所の人が当時の女子職員の名前を借りて、圭湖、純湖、洋湖、弘湖、悦湖(「とらべるまんの北海道では」「あき湖」「秀湖」「美津湖」「洋湖」「逸湖」となっている。)という名前をつけているらしい。学生時代にそのことを知っての印象は、○○子という人が5人もいたのかぁ、だったが、個人的には、この大自然の中では、数字で呼ぶのも良いのかもしれない、という気もする。 これまた、少々消化不良の状態で、知床五湖を後にする。これから知床峠を越えて、最終目的地開陽台へと向かう。これが結構距離があるうえに、遊歩道を回れなかった割には、時間だけ食ってしまったものだから、結局は時間どおりである。というところで、 「ちょっと待った!」 と、突然妻が声を上げた。 よく見ると、エゾシカが道路脇に立っているではないか。ただ、単に立っていただけだから良かったが、見通しの悪いところだっただけに、飛び出されたら接触していたかもしれない、それほどの距離にエゾシカがいた。 車から出て、しばしエゾシカを眺めるが、全然逃げようとしない。耳の後ろに発信機が取り付けられている。 これが最後とばかりに時間なぞ気にせず、しばしエゾシカとご対面。ゆっくりと我々から遠ざかって、草むらへと消えていったが、さすがのかずまるも満足したところで、やっぱり時間が気になってきたので、知床峠へと向かう。 |